中野京子さんの著作から「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」展示作品を知る
イギリス好きなみなさんこんにちは。にんじんてんです。
『ロンドン・ナショナル・ギャラリー』展については別の記事
でも書いてきましたが、みんな大好き、私も大好き『怖い絵』シリーズでおなじみの中野京子さんもいくつか過去の著作で、展示作品を題材にされています。
ここでご紹介します。
どの本も読みやすくてためになる、おすすめ本です。
観覧の際の参考にどうぞ!
※私が持っているのは主に文庫で出ているものです。見落としがあったら随時追加していきます。あしからず※
作品:【第1章】イタリア・ルネサンス絵画 の収集
ヤコポ・ティントレット(本名ヤコポ・ロブスティ) 《天の川の起源》
『名画の謎 ギリシャ神話篇』(文春文庫)
◆「英雄」誕生◆
天界を統べる神ゼウスの妻・ヘラのおっぱいからピューっと飛び出た母乳が天の川になりましたとさ、というお話です。
だから英語で天の川は「Milky Way」と言うんですね。
西洋絵画にはその人物を表す持ち物「アトリビュート」なるものが非常にしばしば登場します。
この絵画では鷲=ゼウス、孔雀=ヘラ。
鷲がつかんでいるのはサソリで雷を表し、ゼウスの雷の力も表現しているそうな。
お、おぼえられん・・・。
母乳を吸う赤子はのちの「ヘラクレス」で、ゼウスの浮気心から生まれた子。
そのあたりのゴタゴタと、彼を取りまくあれやこれやはぜひ本編をお読みください。
ギリシャ神話の登場人物は人間らしいのか、ただのバカなのか・・・。
西洋絵画はギリシャ神話を元にしている作品もたんまりあるので、『名画の謎 ギリシャ神話篇』を読むと、この絵以外にも「見たことあるけど、こういう絵だったのかー!」となることうけあいです。
作品:【第5章】スペイン絵画の発見
エル・グレコ(本名ドメニコス・テオトコプーロス) 《神殿から商人を追い払うキリスト》
『名画と読むイエス・キリストの物語』(文春文庫)
◆第8章 エルサレム◆
エル・グレコは「ギリシャ人」を表す通称だと知っていましたが、本名が「ドメニコス・テオトコプーロス」という覚えにくいものだと初めて知りましたよ・・・。
よかったね、エル・グレコという覚えやすい通称で名前が残って。
「あの、なんだっけ、テ、テ、テオト・・・なんとか?」
とか言われずにすんだね!
さて、神の家たる神殿で金もうけに余念のない堕落しまくった商人に、イエスがぶち切れるシーンです。
余談ですが、ミュージカルの名作『ジーザス・クライスト・スーパースター』でもちゃぶ台ドッカーン!な勢いでそれは激しく
「出て行けーーーーーーーーー!!!」
とお怒りでした(見てない人は見てね。2000年のグレン・カーター主演版がゲキおすすめです!)。 これ ↓↓↓
ジーザス・クライスト=スーパースター (2000) (字幕版)
中野京子さんの『名画と読むイエス・キリストの物語』は、他の『名画・・・』シリーズと違い、絵画一枚一枚の説明というよりは、イエスの生涯が小説のように書かれ、その場面を描いた挿絵のように絵画がちりばめられている、といった感じ。
イエスが生きた当時のエルサレム・・・ごった返した市場のむせかえるようなにおい、商人と結託してわいろをせびる神職者や役人の下卑た笑い。
救いを求める人々の息づかい。
中野さんはドラマのように生々しくその情景を書いています。
まさしく絵画の向こう側にある情景です。
読んでおくとより現実感を持ってこのエル・グレコの作品を見ることができるでしょう。
ギリシャ神話と同じく、イエスの生涯も西洋絵画を見るには必須の知識なので、読んでおくことをおすすめします。
絵画を見るのは知識がいりますね~・・・。
以下は直接展示している絵画の説明ではないですが、バックグラウンドとして読んでおくと楽しめる本です。
作品:【第5章】スペイン絵画の発見
フアン・バウティスタ・マルティネス・デル・マーソ 《喪服姿のスペイン王妃マリアナ》
『残酷な王と悲しみの王妃』(集英社文庫)
◆第二章 マルガリータ・テレサ◆
マルガリータ・テレサはベラスケスの傑作「ラス・メニーナス」(文庫版表紙の絵↑↑↑)に描かれたスペイン・ハプルブルク家マルガリータ王女で、今回展示されている「喪服姿のスペイン王妃マリアナ」はその母にあたります。
『残酷な王と悲しみの王妃』は娘のマルガリータ・テレサ王女についてですが、母親の王妃マリアナの王族に生まれたがために、血族結婚の呪われた血から逃れられなかった人生にも触れています。
30も年上の夫は女好きで無能、息子は生まれた時から死に瀕しており、マリアナ自身、肖像画を見ても無表情で若さのかけらもない。
なんだか人生疲れきってる。かわいそう。
という彼女が神聖ローマ帝国からお輿入れしたスペイン宮廷についても
「今が昨日か、昨日が今か、過去と未来が今に溶けて、なにやら不気味な気配を醸し出していたのではないだろうか・・・」
という記述があります。
この喪服のマリアナ王妃を見ても、薄暗い中に浮かび上がるハプスブルクの青い血の流れる白い顔・・・なにやらゾッとしますね。
以上、ご参考になりましたでしょうか?
思ったより「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」の展示作品を直接取り上げている著作がなかったので、「おや?」と思ったにんじんてんです。
でも展示作品ではなくてもナショナル・ギャラリー所蔵絵画について書いてある著作も多いですし、何しろ楽しく読めて、とてもためになる!
と改めて思ったしだいです。
ぜひこの機会に色々と読んでみてはいかがでしょうか?
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