『ロンドン・ナショナル・ギャラリー』展を見る前に、読んでおいたら役に立つおすすめ本や、肖像画に描かれた「あなたは誰?」をご紹介します。
本の説明の個所は画像をクリックするとAmazonのホームページに飛びます
※2020.6.21おすすめ本を追加しました※
イギリス好きのみなさん!にんじんてんです。とうとうロンドン・ナショナル・ギャラリー展が東京・ついで大阪で始まりますね!
同じくロンドンからやってくるコートールド美術館展の神戸展が中止になってしまい、関西圏の私は悲しく思っていました。
(やってても他府県からだと見に行くのも気が引ける・・・)
が、しかし!ロンドン・ナショナル・ギャラリー展は中止ではなく会期変更のうえ開催予定のようなので、ホッとしました(2020.6現在)。
展覧会公式ホームページはこちら ↓
ナショナル・ギャラリーの国外での大規模所蔵品展は200年の歴史の中でも、今回が初めてだそうです。
すごい!
見に行く前に予習をしておこう
予習なくいきなり見に行くと、作品に圧倒されてなんだかわからなないうちに人に押されて見終わってしまいそうです。
音声ガイドも長時間聞いてると集中力が欠けてきますし、内容も大したことなかったりしますしねえ・・・(失礼な)。
そこで、今回は事前にサクッと勉強できるツール(本など)をご紹介~。
少しでも知識を頭に入れておくと作品がもっと楽しく見ることができますよ!
「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」公式ホームページ
上にもリンクを貼っていますが、国立西洋美術館研究員の方の説明が聞けて、とてもわかりやすいです。
これは見ておこう!
ナショナル・ギャラリー公式ホームページ
本家本元「ナショナル・ギャラリー」のHPです。
『カラー版 教養としてのロンドン・ナショナル・ギャラリー』木村泰司
「教養としての」とタイトルについていますが、そんなに難しくなくこれを読めばナショナル・ギャラリーの名画のことも、西洋絵画の歴史も簡単に知れちゃうというすぐれもの。
読みやすいので2時間ぐらいで読めてしまいます。
平面で表情のなかった絵画が、時代を経るごとにどんどん躍動的、表情豊かになっていく様がよくわかります。
今回展示される展示作品のうち、30点あまりがカラー図版つきで説明されています。
これは読まねば!
『マンガでわかる ロンドン・ナショナル・ギャラリーの見かた』有地京子監修
このへんは大きな書店に行くと結構山積みになってたりします。事前に目を通しておいた方がいいですよ!
「マンガでわかる・・・」とありますが、しりあがり寿風の挿絵がある程度で、別にマンガじゃない・・・。
この本の良いところは、
①絵のパーツパーツの説明が詳しい。
例えばこの絵のこの部分は〇〇を表していて・・・と丁寧に説明してくれる。
②美術史のおさらいもできる。
③絵画の説明の後に画家の詳しい説明があってわかりやすい。
絵画、画家、美術史の流れがれぞれページを分けて書かれているので、見てわかりやすい。
今回の展覧会だけでなく、西洋美術史を知る上でも、実際にロンドンでナショナル・ギャラリーに行く時にも役立ちそうです。
『名画で読み解く イギリス王家12の物語』中野京子
大好き『怖い絵』シリーズの中野京子さんです!
今回はヴァン・ダイクの絵もやってきますし、イギリス絵画に大きな影響を与えたヴァン・ダイクを三顧の礼でフランドルから呼び寄せたチャールズ1世やその後の王室についても知っておくと、作品を見る時に深みが出るってもんだ。
実際、今回展示される肖像画でイギリス王室の人が登場するので「この人誰?」となるより、
「ああ、あの不詳のご子息(王子だけど)のお母様で・・・苦労しましたね・・・」
と思いながら見た方が絶対楽しい。
ドキュメンタリー『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』
ナショナル・ギャラリー 英国の至宝(字幕版)
2020年6月現在Amazon primeで視聴可。
サクッと見れませんでした!かなりじっくり見ないといけない・・・けど、その分見て損はありません。ちょっと長いけど。
所蔵絵画の説明というよりは、ナショナル・ギャラリーすべてを説明するドキュメンタリー映画です。
絵画について来館者に説明するスタッフの映像から、修復作業、スタッフ内の会議、実施しているセミナー、絵画教室の様子など、まるっと「ナショナル・ギャラリー」です。
今回の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー」展で展示される作品は
ゴッホ「ひまわり」
ベラスケス 「マルタとマリアの家のキリスト」
ぐらいしか出てきませんが、ベラスケスは修復シーンや修復家の「どこまで修復すべきなのか」「今の状態を活かすのか」「描かれた当時に戻すのか」という話も聞けて興味深い。
古い時代のものを扱ってはいるけれど、新しい取り組みにも貪欲なナショナル・ギャラリーを知ることができます。
※この映画については別ページで詳しく説明しています。
イギリスに関係している肖像画をチェック!
展示作品一覧を見ていて
「君はいったい誰やねん!」
と思った人(イギリスに関係してそうな人)がいたので調べてみました。
※なるべく公式HPでも説明のない作品をピックアップしました。説明はロンドン・ナショナル・ギャラリーの公式HPの作品ページを参考にしています。
【第3章ヴァン・ダイクと イギリス肖像画】
ヘリット・ファン・ホントホルスト 《ボヘミア王妃エリザベス・ステュアート》
エリザベス1世の次にイングランドとスコットランドの国王になったジェームズ1世(スコットランドではジェームズ6世)の娘。清教徒革命で首ちょんぱになったチャールズ1世の兄妹。
嫁ぎ先のプファルツ選帝侯フリードリヒ5世がボヘミア王になったものの、約1年の短い統治の後、亡命したため「冬の女王」と呼ばれる(冬に即位し、冬に大敗したからかな?)。
夫の死後なので喪服を着、耳には夫からもらった大粒真珠のイヤリングをつけています。
亡命先からロンドンに戻り、一年もたたないうちに亡くなりました。
彼女の孫(ジョージ1世)がハノーファー選帝侯からイギリス国王になり、現在のウィンザー王家につながっているそうです。
この辺の歴史は前述の中野京子さん『名画で読み解くイギリス王家12の物語』をご参照ください。
【第3章ヴァン・ダイクと イギリス肖像画】
トマス・ゲインズバラ 《シドンズ夫人》
サラ・シドンズ。演劇一家に生まれて俳優と結婚し、シドンズ夫人と呼ばれた「マクベス夫人」役を代表作とするロンドンの舞台女優。約30年間トップ女優として君臨し、女優として脂が乗り切った頃(と思われる)に描かれた作品。彼女が大ヒットを飛ばした時は、人気のあまり劇場の周りに長蛇の列がぐるぐるしてしまったらしい。
アメリカ・シカゴでは彼女の名前にちなんだ賞が優れた俳優に与えられており、ロンドンのPaddington Green(公園みたいなの)には銅像もあります。
ちなみにサラが出演したドルリー・レーン劇場は今でも現役でありまして、この間ロンドンに行った時にミュージカルを観てきました。
何百年も前の劇場が普通に存在して、今でも使われているのがすごい。
【第3章ヴァン・ダイクと イギリス肖像画】
トマス・ローレンス 《シャーロット王妃》
ドイツの小さな公国からイギリス国王ジョージ3世の元にお輿入れしたシャーロット王妃。
夫婦仲は良く、15人もの子供に恵まれたが、問題児続出。
皇太子はリージェント・ストリートで有名なのちのジョージ4世。ジョージ4世はブライトンに豪華絢爛ロイヤル・パビリオンを建てた人。私はああいうセンス、嫌いじゃないけどな!
ジョージ3世は病に悩まされ(中野京子さんによると「ポルフィリン症」だったとか)、王妃も子供のご乱行もあって心労が絶えなかった。
画家のモデルになった時も、かなりお疲れモードだったようです。
ちなみに夫のジョージ3世は他の国王に比べると珍しく品行方正で愛妻家、国民からも「農民ジョージ」の愛称で国民からも親しまれました。
【第4章グランド・ツアー】
ポンペオ・ジローラモ・バトーニ 《リチャード・ミルズの肖像》
一番「誰だよ?!」と思ったのは、君だ!リチャード!
なんだ、すました顔だな!リチャード!
カンタベリー議会議員だそうです。この当時はお金持ちの間でイタリアツアーが流行っていたので、この人もご多分にもれずツアーにお出かけになったのでしょう。
イタリアに向かう途中で立ち寄ったスイスの街を指さしているらしい。
現代で言うところの記念写真でしょうか。
と、いうわけで簡単にご紹介しましたが、展覧会をご覧になる際の参考になれば幸いです。
ロンドンで「日本とイギリスをつなぐ」ガイドをされているにんじんてんのお友達(かれこれ20年ぐらいのお付き合いになります)が、「家に居ながら、ロンドンの有名ミュージアムを訪ね、オンラインで歴史・美術史を学ぶ」を開催中!
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大英博物館でアシスタント・キュレーターをされていたこともある、知識豊富なとっても気さくで楽しい方ですので、楽しめてためになること100%です!