BBC『ゴッホ 真実の手紙』
イギリスを舞台にした作品ではありませんが、BBC制作ですし、ロンドンのナショナル・ギャラリーには「ひまわり」をはじめとするゴッホの作品が何点か所蔵されています。
また、2020年に東京と大阪で開催される「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」では「ひまわり」が出展されますし、ゴッホの人となりを詳しく知るためにも見てみました。
以下、その感想です。
不遇の天才画家ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ。オランダでの若き日々から、フランスで命を絶つまでの彼の人生を追う!
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出演:ベネディクト・カンバーバッチ、ジェイミー・パーカー
ゴッホ 真実の手紙(字幕版)
ベネディクト・カンバーバッチがゴッホを演じる!
このドラマ(というかドキュメンタリー?)は、ゴッホと弟テオの書簡を主にして製作された「生の声」による物語です。
演じるのが『SHERLOCK』のベネディクト・カンバーバッチですよ!名前が長いよ!
顔も長いよ!でもその長い顔がゴッホにぴったりというか、ゴッホ顔というか(どんな顔だよ)、とても合っていました。
狂気すれすれだったり、本格的に狂気に足突っ込んでたりのゴッホを演じるカンバーバッチ、すげえ・・・。
とにかく見てください!
私はゴッホの人生については「弟に迷惑をかけて、ひまわりを描いて、耳をちょん切って、自殺してしまった」(なんかひどくてすみません)というぐらいしか知識がありません。
ひまわりを見ても正直ピンと来なかったのですが(これは絵の好き嫌いなのでどうしようもない)、ロンドンの美術館で偶然展示していたゴッホの作品を見て、
「この人、普通の人と見えるものが違う・・・」
と驚愕したのを覚えています。
驚愕した割になんの作品を見たのか記憶がないのがダメだけど。
さて、その程度の知識のみで見たこのドキュメンタリードラマ、結果から言うと見て良かったです。
50分という短い時間にギュッとすべてが詰まっている素晴らしい作品。
ベネディクト・カンバーバッチはこういう変わった人の役がぴったりはまりますね~。
そんなに激しく動き回るわけではなく、弟への手紙をセリフにしながら芝居をしているのですが、その押さえた演技がゴッホという人を純粋に表している。
すごいです。
孤独を恐れる
すべてを通してゴッホが恐れていたのが「孤独」。
何をやっても上手くいかず(うーん、身に染みるなあ)家族から見放され、オランダの田舎に行ってそこで農村の風景に美を見出だすも、孤独に耐えられず、結局家族の元に戻る。
当時流行っていた印象派については「私はさほど新しいものに興味を惹かれないんだよ」とテオに書き送っていたが、
マジ?!あんなに新しい画風で絵を描いた人が????
とちょっとびっくり。
孤独はどこにでも彼に付きまとい、恐れる。
誰かと共にいたいと願うが、いつも失敗する。
パリでテオと共同生活を行うも、パリの悪い部分に染まって堕落。
テオとも仲がこじれる。
フランスのアルルに移り住むがここでもさみしくなり、仲良しのゴーギャンを呼び寄せるもうまくいかず、発作的に左耳を切り落とす事件発生。
悲しい・・・。
「神々しい黄色の太陽よ!」
アルルに向かう列車の中でのセリフ(テオへの手紙)です。
「空気は澄みきり、色彩の効果は魅力的だ。淡いオレンジ色の夕日が野山を青に近い色に染める」
フランスに移り住んだ時からどんどん描く絵の色彩がカラフルになっていくんですね。
しかしゴーギャンとの共同生活も破綻し、耳切り落とし事件をおこして、サン・レミの療養所に。
思うんだけど、我の強い芸術家って共同生活しちゃいけないような気がするんだけど?
絶対ぶつかるでしょ・・・。
サン・レミの療養所でもたびたび発作をおこして、ひどいときには絵の具をなめ、ランプオイルを飲んだりもしたようですが、
「正気でないと認めようと思う」
そんな兄をテオは
「どんな精神状態で絵を描いているのか私は心配だ。自分を追い込んでいるのではないか」
と心配します。
この時代に描かれた絵(空が青いぐるぐるになってる「星月夜」など)を見ても、とても普通に安穏と暮らしている人が描いたものとは思えない。
何か行ってはいけない側の「何かを見て来てしまった人」のみが見える風景のように思えます。
「私は負け犬だ。修正は不可能だ」
小康状態になったゴッホはパリ近郊のオーヴェールへ転地。
「悲しみを表現したい。激しい孤独を」
最後の手紙をテオに書いた4日後拳銃で自殺を図り、駆けつけたテオに見守られながら亡くなります。
「生きるのがつらかったのだ」
生涯にわたって兄を支え続けたテオも兄の死の6ヶ月後にこの世を去ります。
(おそらく梅毒だったのではないかと言われています)
ゴッホから弟テオへの手紙は600通ぐらい残っているらしく、このドラマもその手紙を元にセリフを組み立てているので、心の声ダダもれ。
今までおぼろげだったゴッホの姿が一気に「人間」になって近づいてきました。
これで「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」で「ひまわり」を見る時も、今までよりも違った想いで見ることができると思います。
ありがとう、BBC!
イギリスポイント
うーん、舞台がイギリスじゃないので、あんまりないのですが・・・。
①BBCが誇る(?)イギリス英語を堪能できる
私はいつもイギリス英語の番組を見る時は、イヤホンで聞いているのですが(より聞き取りやすいように)、今回も堪能しましたよ、ブリティッシュ・イングリッシュを・・・。
時間も50分と短いですし、集中して聴けると思います。
②ゴッホは若い時仕事でロンドンにいた
美術商のグーピル商会ロンドン支店で2年ほど働いており、その間にチャールズ・ディケンズやイギリスの新聞に掲載された版画に興味を持っていたそうです。
へえ~。(ってそれだけかい!)
以上です!