来館日:2022年7月23日(土)
開催場所:神戸市立博物館
観覧料(税込み):1,600円(前売り券)
周辺の壮大な自然環境と、起伏に富む重厚な街並みで「北のアテネ」とも称される古都・エディンバラ。その中心に1859年に開館したスコットランド国立美術館は、現在では毎年230万人以上が訪れる、ヨーロッパでも屈指の規模を誇る美術館となっています。その収蔵品は、中世から現代にいたる西洋美術史をカバーしつつ、英国、特に地元スコットランドの芸術家たちの作品に関して唯一無二のコレクションを形成してきました。
本展では、このスコットランドの誇る至宝の中から、ラファエロ、エル・グレコ、ベラスケス、レンブラント、ブーシェ、ルノワールなど、ルネサンス期から19世紀後半までの西洋絵画史を彩る巨匠たちの作品を展示します。ヨーロッパの巨匠たちによる芸術に触発されて生まれた、ゲインズバラ、レノルズ、コンスタブルらによる英国絵画、特に、レイバーン、グラントなど、スコットランド出身の画家たちの珠玉の名品も多数出品。合わせて87件89点の作品のうち、75点が日本初出品のものです。
神戸市立博物館HP
そうそうたる画家の名前が並んでいますね。
これは西洋絵画好きな私は是が非でも観に行かねばーと勇んで行ってきました!
以下、神戸市立博物館「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」の
- チケットの購入方法(時間指定は有効か)
- 当日の混雑状況と所要時間
- 展示内容と感想、見どころ
- ミュージアムグッズ
- 予習、復習に役立つ動画・書籍など
を書いていきます。
チケットは事前購入時間指定 優先
入場は時間指定が優先入場とのことだったので、以下のサイトから事前に購入して行きました。
手数料は無料、登録も必要ないので楽ちんです。
当日QRコードをかざして入館です。
土曜日の17:30指定にしたのは「サタデーナイト・フォトアワー」ということで、全作品写真撮り放題!だったからです(撮っとかないと忘れる)。
当日の混雑状況・所要時間
土曜日17:30はほどほどの混み具合で見やすかった
上記のように事前予約をしていきましたが、この土曜日17:30写真撮り放題情報はマニア(?)の間で浸透していたのか、ほとんどの人が事前予約で入っていたようです。
当日券売り場はガラガラだったので・・・。
当日券売り場はこんな感じでした。
しかし、会場に入った途端けっこうな人。
でも背の低い私でも、混みすぎてて見えない!!!ということはありませんでした。
土日のお昼間はわかりませんが、土曜日の17:30はほどほどの混み具合で見やすかったです。
中にはものすごい高性能(のように思われた)なカメラでガシャガシャ絵の写真を撮っている方もいて、
「なんに使うんだろう・・・」
と思わず見てしまいましたよ。
私は自分の記録用なのでぼけてなきゃ別にいいんですけどね。
見るのにどのくらい時間がかかったか
写真を撮り、この記事を書くためにメモメモし、絵をじっくり見・・・としていたら気づいたら19時すぎ(音声ガイドは借りていません)。
閉館が19時半なので、急いでミュージアムグッズを見て、お手洗いに行って博物館を後にしました。
もう少しじっくり見たかったので、2時間ぐらいはほしいかもしれません。
普通に見るには1時間半あればよいかと思います。
事前にチェックしておいた方が良い情報
展覧会に行くときはある程度どのような作品が展示されているか調べていくのですが、今回役に立ったのがYouTubeでした。
おすすめYouTube
全16回とちょっと多く、説明がざざーーっと流れてしまう感はありますが、絵を観るポイントを説明してくれるし、公式な見どころ以外にも作品を紹介してくれているので参考になります。
お次は東京都会場だった東京都美術館学芸員によるギャラリーツアー。
時代背景なんかも交えてわかりやすく説明してくれてるんですが、いかんせん音声が小さいんだよな~。
もともと展覧会場からのライブ配信だったようなので仕方ないのですが・・・。
東京都美術館はこの特別展にも展示されているベラスケスの絵に描かれている卵料理を実際に作ってみた動画も載せていておもしろい。
アート関連サイトのレビューなど
概要をさっと知りたい場合はこちらをどうぞ。
独断と偏見による見どころと感想
あくまでも私個人が感じた独断と偏見による見どころと感想なので、
「〇〇の絵がないじゃないか!」「有名な〇〇はどうした!」
ということがあるかもしれませんが、あしからず・・・。
ルネサンス
◆アンドレア・デル・ヴェロッキオ(帰属)
「幼児キリストを礼拝する聖母(「ラスキンの聖母」)」
評論家・芸術家ジョン・ラスキンが一時所蔵していたのがこちら。
ルネッサンス期の聖母子像は可愛くない赤子と不気味な表情の聖母が多いのですが(違ったら失礼)、こちらはそんなことないな~と思って見入った作品。
赤子も不吉な顔じゃないし、マリア様からもそこはかとなくただようアヤシサ。
背後の神殿はキリスト誕生とともに崩壊したという伝説が残るローマの神殿ともいわれており、古い宗教に対する新しい宗教の勝利を表しているらしい(スコットランド国立美術館HPより)。
ふーん・・・そうなのか。
◆ジョルジョ・ヴァザーリ
「男性の頭部と左腕、腕と手の習作」
1.ルネッサンスでは習作がいくつか展示されています。
作品を描く際の下準備。人物や背景の構図の研究や、他の画家の作品を模写して練習に練習を重ねて作品に取りかかったことがわかるもの。
こちらもそのひとつ。
イタリア アレッツォ中世近代美術館のホールに展示されている以下の作品の左端の緑色の洋服を着た男性を描くための練習だったそうです(上記YouTubeによる)。
そりゃ画家だって練習しないでいきなりサラサラーっと描けたりしないですよね(描ける人もいるだろうが)。
構図がああで、この人をここに配置して、そうしたらポーズはこうで・・・と色々研究して描いたに違いない。
という努力を感じられる1枚でした。
◆エル・グレコ
「祝福するキリスト(「世界の救い主」)」
これはぜひ実物を展示場で見ていただきたい作品です。
展示場の照明がうす暗いこともあって、顔の周りの白い光がぼわっと浮かび上がるようで、澄んだ瞳のキリストに妙に引き付けられました。
バロック
◆アダム・エルスハイマー
「聖ステパノの石打ち」
ステパノはユダヤ教を批判したために石打ちの刑に処せられたキリスト教初の殉教者。
この作品では右側に石を持って今にも振り下ろそうとするピンクのパンツの男性、真ん中に血を流してひざまずく豪華な衣装のステパノが目立つ構図ですが、ステパノには天使が放つ光が天から降り注ぎ、彼には下りてくる天使が見えているよう。
小さな絵の中におそろしく精密に大勢の人物が描かれたこの作品。見れば見るほど色んな人が描かれています。
◆ディエゴ・ベラスケス
「卵を料理する老婆」
ベラスケス18-19歳の時の作品だというからすごい。
50歳近くの円熟味を増した頃の作品といっても納得の完成度。
◆ヤン・ステーン
「村の結婚式」
庶民の暮らしを活き活きと描いたヤン・ステーンによる「村の結婚式」
結婚を祝うというよりただはやし立てているように見える村人たち。
宿の2階からも身を乗り出して見物してますね~。
新郎はややハゲのゲヒヒヒ親父だし、新婦にとってははやし立てられるような望まない結婚だったのかも・・・。
と下世話な勘繰りをしてしまうほど、まるで写真のようにその風景を切り取った作品です。
◆フランス・ファン・ミーリス(1世)
「リュートを弾く女性」
あら〜いいですね〜。
小ぶりで地味目な作品ですが、良いです。
こんな絵が飾られて似合うお屋敷に滞在してみたい。
◆レンブラント・ファン・レイン
「ベッドの中の女性」
レンブラントの描く人物の顔ってみんなレンブラントの自画像に似てませんかね・・・。
そう思うのは私だけ?
それはともかく。
旧約聖書「トビト記」に記載の新婚初夜に7回も悪魔アスモデウスにご主人を殺されてしまい、8人目の旦那が悪魔と戦っている様子をベッドからのぞき見しているこちらの女性。
この表情ですよ・・・。
不安と期待と今回もダメだろうな・・・という絶望と自嘲のような微笑みすら感じさせるこの表情。
うーむ
とうならざるを得ませんな。
おさすがです(何目線だ)。
ちなみに悪魔アスモデウスはこんな感じ。
ちょっとよくわからない造形ですね。
こんなのに7回もご主人を殺されていたら嫌だなあ。
3回殺された所ですでにあきらめそうですが、たびたびチャレンジする(?)のがすごい。
グランド・ツアーの時代
◆フランソワ・ブーシェ
「田園の情景(「愛すべきパストラル」)」「田園の情景(「眠る女庭師」)」「田園の情景(「田舎風の贈物」)」
いいですね!ブーシェです。軽やかです。何も考えずに見られる絵です。
ブサイク猫を見ていただきたい。
暗い時代には絶対描くことのできない優雅で明るさに満ちた画面。
見ていて「きれいだな~」と素直に思える作品です。
◆ジョシュア・レノルズ
「ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち」
白いドレス、ピンクの頬・・・無条件に「きれいだな~」と思える作品その2。
見ていて幸せになれます。
キービジュアルにもなっている絵ですね。レノルズ先生はイギリス ロイヤル・アカデミーの初代会長。それまで外国人画家が主流だったイギリスにおいて、イギリス人画家の推進に尽力した人物です。
歴史画の要素を肖像画に取り入れ、モデルを理想化して描きました。
こちらも大変美しい三姉妹でございます。結婚適齢期のお見合い写真みたいな意味合いもあったのかもしれませんね。
そのあたりの詳細はこちらに紹介されていましたので、ご覧ください。
上記HPにも記載がありましたが、この絵を発注したこの三姉妹の大叔父、政治家で小説家でもあるホレス・ウォルポールがロンドン郊外に建てたゴシック様式のお屋敷「ストロベリー・ヒルハウス」がこちら。
素敵!行ってみたい!
ロンドンからも近く、行きやすそうです。
◆ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ
「民衆に晒されるキリスト」
これだけで立派に作品として成立している。
キリストの後ろのピラト(ローマ帝国ユダヤ属州)総督の表情が
「イヒヒヒヒ~」に見えて気になる素描。
サラサラっと描かれたふうではありますが、とても味があって気になります。
19 世紀の開拓者たち
◆ウィリアム・ブレイク
「石板に十戒を記す神」
十戒を刻む神とひざまずくモーセ。
周りには天使?
しかし神の右ひじのあたりのいる男女は天使に見えないんですけどね。
誰なんだろう・・・。
それにしても神の御業というか、ものすごい炎です。
画面下でこちらにお尻を向けているモーセが気をつけて見ないとなんかのかたまりにしか見えないという・・・。
◆ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル
「オシアンの夢」
「つわものどもが夢のあと」的なものとして解釈していいのかしら。
オシアンはスコットランドの伝説的戦士であり詩人。彼が疲れ果てて眠り、その頭上には彼が見る夢のように共に戦ってきた戦士や女性たちが描かれる。
ちなみにアングル美術館所蔵の作品がこちら。
ちなみにこの絵もそうですが、素描や習作はものすごく近づかないと良く見えない・・・。
そんな時にお役立ちだったのがこの「単眼鏡」!
軽くて邪魔にならず、遠くからでも絵をじっくり鑑賞できるすぐれものです。
私が購入したのはこの商品です。
◆ジョン・マーティン
「マクベス」
こちらもぜひ展覧会場で実物を見ていただきたい作品です。
荒れ狂うようにも見える空の色。
その空へと混じり合うようにして続く荒々しい山肌。
右下に渦巻く兵士。
この絵、左端に『マクベス』に出てくる3人の魔女が飛んでいるんですが(1枚目の画像をよく見てください)、空と兵士に気おされてあまり目立っていませんでした。
よく見ないと見落としそう。
ぜひ実物を見ていただきたい!
◆ウィリアム・ダイス
「荒野のダビデ」「悲しみの人」
ラファエル前派とも関係のあったスコットランドの画家ウィリアム・ダイス。
なんとなくロマンチック~(?)な画面からもその関係性が伝わってきます。
ダビデは美青年ですしね。
聖書に題材を取りながらも背景は画家の生きた時代のスコットランド。
あえて親しみのある風景を描くことで親しみを持たせる。新しい宗教画なのかと思います。
◆ジョン・エヴァレット・ミレイ
「古来比類なき甘美な瞳」
イギリスの詩人の詩から引用したというタイトルもまた素敵。
化粧っけのない少女の美しさが光ります。
ロリコンとか変なことを考えずに素直に
「かわいいなあ」
と鑑賞しましょう。
この人は誰?
さて、肖像画も多かったこの展覧会。
気になった肖像画に描かれた人を調べてみました。
◆アンソニー・ヴァン・ダイク
「アンブロージョ・スピノーラ侯爵(1569 – 1630)の肖像」
敵からもその才能を高く評価されたというスペイン黄金時代を代表する武将。
威風堂々。いくつもの戦線を生き抜いてきた人生や、また迫りくる老いも描き切っていますね。
どうでもいいけど、このシャンプーハット襟。
ご飯食べにくそうですよね。食べる時ははずしたんでしょうか。はずしたんだよな。
首の短い人は顔がヒダヒダにうずもれて大変そうですな・・・。
それはさておき。
ベラスケスが描いたスペインとオランダの戦い「ブレダの開城」の中央右側に描かれているのがスピノーラ公爵です。
◆トマス・ゲインズバラ
「ノーマン・コートのセリーナ・シスルスウェイトの肖像」
調べたけどロバート・シスルスウェイトと結婚したぐらいで、どんな人かはわかりませんでした。
同じくゲインズバラによって描かれたロバートさんがこちら。
レノルズとイギリス2代巨頭(?)のゲインズバラですが、いまいち魅力を感じないのはなぜでしょう・・・。
このセリーナ・シスルスウェイトの肖像も、
「ふーん・・・」
という感じで通り過ぎてしまいました(失礼!)。
な〜んか性格悪そうな感じ(失礼!)。
◆アラン・ラムジー
「「シャーロット王妃とその子どもたち」のための習作 」
ラムジーはイギリス国王ジョージ3世の宮廷画家ですが、「ラムジー」と聞くと『ゲーム・オブ・スローンズ』のキョーレツ鬼畜くそ野郎キャラ、ラムジー・ボルトンを思い出してしまうのですが・・・どうでもいいですね。
シャーロット王妃はジョージ3世の妃。
イギリス王室コレクション所蔵のシャーロット王妃。習作はこちらの作品のためかと思われます。
ちなみに同じくスコットランド国立美術館所蔵のご主人ジョージ3世はこちら。
シャーロット王妃はご主人の病気や息子の放蕩(のちのジョージ4世)などに悩まされて、別の絵ではかなりお疲れモードのご様子。
それがこちら。ロンドンナショナルギャラリーに展示されていたシャーロット王妃の肖像画について書いた記事です。
◆ヘンリー・レイバーン
「ウィリアム・クルーンズ少佐(1830年没)」
スコットランドで生まれ、活動のほとんどをエディンバラで行い、ラムジーの後を継いでジョージ4世の宮廷画家となったレイバーンによって描かれました。
どことなくイギリス人俳優ショーン・ビーンに似ているような気もするウィリアム・クルーンズ少佐。
歩兵連隊に所属していたことぐらいしか調べきれませんでしたが、自分に自信がなかったらこんな肖像画にはなるまい・・・。
少佐に昇進してから退役までの間に描かれた作品とスコットランド国立美術館HPには書いてありましたが、一番自信に満ち溢れている時に記念に描いてもらおうか、と依頼したのかしら。
テカる馬のお尻にも引けをとらない堂々たるたたずまい。
モテたに違いない。
ミュージアムグッズ
コラボ商品がいっぱい出ていました。
こちらBEAMS DESIGNとのコラボ。
ぐでたまコラボ
キューピーちゃんキルトコスプレバージョンもありました。
あとは定番のチケットホルダーやクリアファイル、絵葉書など。
スコットランドっぽいお土産のようなものも売られていました。
今回はグッズが豊富なので、グッズをしっかり見る時間も取って行かれた方がいいと思います。
読んでおくとより理解が深まる参考文献
『マンガでわかる「西洋絵画」の見かた 聖書編』監修:池上英洋
日本人にはとかくなじみの薄い聖書。
しかし西洋絵画を見ていると避けては通れない聖書のエピソード。
漫画というよりヘタウマイラストの解説付きでキリスト教絵画史と主な画家、聖人、聖書のエピソードなどを説明してくれます。
今はネットでなんでも調べられますが、これ1冊持っていたらわかりやすいんじゃないかと思います。
と、色々書いてきましたが、スコットランド国立美術館展は本当に幅広く素晴らしい作品を展示しているので、見に行って損はないです!
暑い夏は涼しい美術館で過ごしましょう!