朗読劇 忠臣蔵 観劇感想

宝塚歌劇

観劇日:2025年3月29日 16:30公演
劇場:兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

忠臣蔵 | 梅田芸術劇場
梅田芸術劇場は、メインホールとシアター・ドラマシティの2つの劇場があり、演劇・ミュージカルからクラシック・オペラ・バレエまで様々な演目をお楽しみいただけます。

まさかの『忠臣蔵』が朗読劇で上演!!

しかも当時のキャストが出演。

宝塚で上演した当時、一番宝塚にはまっていた私は何度大劇場に足を運んだことか・・・。

♪吉良殿は吉良殿はどうなった~。喧嘩なら両成敗喧嘩なら両成敗♪とか歌えますからね・・。

そしてOG公演で「花に散り雪に散り」を聴くたび涙していたことか・・・。

これは絶っ対に観なければ!!

と鼻息荒く観に行って来ました。

その感想です。

完全に個人的に振り切った感想になっていますのであしからず。
思い違いがあったら申し訳ございません。

上演時間と構成

上演時間

休憩なしの100分でした。

もともとは一本立てのお芝居をこの時間内にまとめなおした脚本の荻田先生に拍手!

松の廊下や内蔵助が刺客に襲われるシーンでは動きもあり、100分があっという間でした。

構成・話の流れ

朗読劇と言っても、後ろにピアノ(𠮷田優子先生)、バイオリンなどの少人数演奏者がひかえた生演奏での歌アリ劇。

出演者は黒地に金をあしらった着物風のお衣装。扇子を上手く小道具(刀の代わりとか)として使い、手前上手に3つある鼓みたいな椅子、下手の椅子に座る、舞台上に斜めに置かれた一段高くなっている台を行ったり来たりしながら演じます。

杜けあきさん以外はみんな兼役で(男役娘役関係なく)入れ替わり立ち代わりです。

時々板塀(?)みたいなのが降りて来て、そこに初演当時の写真や錦絵、江戸の地図なんかが映し出され、

「あー、初演の時はこんなんだったなあ・・・」

としみじみ。

流れとしては、ところどころはしょりながらも、初演当時の脚本に沿って進みます。しかしはしょられた違和感はない。オギー(荻田先生)お見事。

「殿、上野介、討ち取りました」

「内蔵助、よくぞやった」

から始まり、内蔵助の歌(「元禄十四年三月十四日」)に続き、

吉良上野介にいじめられる浅野内匠頭

我慢ならず吉良に斬りかかる内匠頭

内匠頭切腹

大評定(合戦討ち死にか殉死か)

赤穂城明け渡し(大石内蔵助、りくとの離縁)

吉良を討つ決意を固める内蔵助

江戸に向かう

同士の脱落

内蔵助の花街での放蕩とそれをとがめる浪士

上杉家家老 色部又四郎、間者お蘭、小林平八郎の討ち入り阻止のためのあれこれ

内蔵助とお蘭の邂逅

討ち入りするのかいつやるのか?読売と江戸っ子たちの歌

岡野金右衛門とおきく

内蔵助の江戸入り

綿屋喜左衛門と内蔵助

内蔵助とお蘭の出会い再び

吉良邸の茶会の日程を漏らすお蘭

お蘭を斬る小林平八郎

討ち入り

フィナーレ

と、こんな感じで怒涛の如く突き進み、気づいたら

あっという間に「思い残すことはござらん!」になっておりました。

当日配布していたポストカード

出演者 個人的感想

杜けあき

再び内蔵助を演じてくださり、ありがとうございます!

としか言いようがございません。

もうね、たたずまいが大石内蔵助なのですよ!

出て来て椅子に座るだけなのに、なんだこのあふれ出る男の魅力は!!

それでね、椅子に座る時におそらく日本物のお約束?でたもとを後ろにさっと払ってから座るんですが、その所作も美しい!

初演当時(33年前・・・)は私も若かったので、そこまで内蔵助に魅力を感じなかったのですが、なんでしょう、台詞や存在からじわじわ来るこの懐の広さ!大きさ!色気!

惚れてまうやろー!!

と久しぶりに胸がドキドキしましたよ・・・。

死ぬまでついていくっス!ご家老!

となんかよくわからんことになってしまうのでした。

三十数年を経て、パワーアップした杜内蔵助にやられました。

ライトが当たっていない時、薄闇に腕を組んで座っている姿すら

素敵

私も年を取ってそういう魅力がわかるようになったのね・・・。

カリンチョ(杜)さんはどんな役をやっても温かさが感じられるのですよね。

今回も討ち入り終わって袖にはけるみんなを見つめる目の優しいことといったら…(涙)

そういえば『雪組100周年 100th anniversary 「Greatest Dream」』を観た時も、

「杜、ギャッツビー最高!」と興奮したんだった・・・。

つまりカリ様は素晴らしいということですな。

紫とも

パタパタ耳は健在のとんちゃん(紫)。

やっぱり大人の女性を演じると素敵ですね~。

阿久里とお蘭の時は肩の落とし方とか「在り方」が全然違う。

あだっぽいお蘭の方がとんちゃんには合っていて、この役も30年経ってから観ると、

「そりゃそんな死と隣り合わせの生き方してきたら内蔵助に惚れるよなあ〜」

と理解できるのでした。

吉良邸での茶会が日延になったと内蔵助に伝えに来た時の二人のやりとりが…

また泣けます。

「そうやって生きてきたのか…」
「命を守れ」

とお蘭に言う内蔵助。優しくも悲しい。

二人で歌う歌(「花ひとつ」)もまた余韻を残してせつなくていいんだよ。

とんちゃんは『川霧の橋』の小りん姐さんも色っぽくてでも品があって素敵でした。

今こういう役をできる娘役はいるのかしら(最近宝塚を観ないのでよくわからない)。

香寿たつき

タータン(香寿)!

歌上手いな!

タータンは内匠頭と岡野金右衛門役で一路真輝さんの役どころだったのですが、あらためて歌の上手さを実感しましたですよ。

いっちゃん(一路)が「清廉一本筋」内匠頭だとしたら、タータンは「苦悩系」内匠頭。

いっちゃん内匠頭は怒らせたら何するかわからないから怖いけど、タータン内匠頭は悩みまくって自滅しそう。
自滅する時に周りを巻き込むタイプ。

髪型は正面から見ると短髪男役ヘアーなのかと思ったら、後ろは長くて一つにまとめてました。

タータンは初演当時、新人公演で内蔵助もしていたし、NHKで「次の二番手コースか?」みたいな特番も組まれていましたね。

紆余曲折?の末、星組でトップになったけど、星の王子様って感じじゃなかったなあ・・・。
なんとなく。

そういえば、吉良邸を見張る位置に店を出している赤穂浪士の蕎麦屋でのお蘭とのやり取り

「見張り大工じゃないのかい」

「姐さん!」

というのもタータンがやっていたのですが、本公演でも本役としてやってたんでしたっけ?

渚あき

あきちゃーん(渚)!相変わらず可憐です。

私は現役当時あきちゃん推しでした。

愛華みれさんのファンだった私は、あきちゃんが花組に組替えになって、タモ(愛華)さんとよく組んでいて喜んだことを思い出しましたよ。

あきちゃんは今回おきくの他、亜久里の侍女、赤穂藩士の妻、赤穂藩士、江戸の女などなど複数の役をやっていました。

大評定に参加してわちゃわちゃする赤穂藩士と、困惑する赤穂藩士の妻が間髪入れずに入れ替わったので、ちょっと???と笑ってしまいましたが、やってるほうは大変だろうな~。

あきちゃんは新人公演でもおきくをやってたんですね。

タータンとは星組トップコンビですな。

成瀬こうき

おお、久しぶりのおっちょん(成瀬)ではないか。

高嶺ふぶきさんがやったイケメン礒貝十郎左衛門、色部又四郎、赤穂藩士など色々。

この色部様が渋くて、上杉のお家大事で、でも悪いこと考えてそうでなかなかよかったです。

彩吹真央

内匠頭切腹時に遠くから見守った片岡源五右衛門、大石主税、赤穂藩士、読売など色々。

ユミコ(彩吹)も歌上手いな!(誰目線なんだ)

読売の時は読売頭巾(?)をかぶっての登場。

この人、こういうハキハキした歌がよく合いますね。
見ていて気持ちがいい。

花組新人公演『夜明けの序曲』でも、ユミコが登場した時、歌のあまりの上手さにものすごい拍手が起きたことを思い出します(本役が誰かは言うまい・・・)。

立ともみ、小乙女幸、朱未知留、はやせ翔馬、寿つかさ

ごめんなさい、ひとくくりにしてしまいました。

立ともみさん 吉良上野介、綿屋喜左衛門、多門伝八郎もだったっけ。

ともみ(立)さんは初演当時も綿屋喜左衛門、多門伝八郎を演じてました!
びっくり~。

切腹前の内匠頭に片岡源五右衛門の目通りを許したりして、多門様、いい人だ。

吉良はとことん嫌な奴。この方は日本物の悪役が似合う印象でございます。

小乙女幸さん 大石りく、江戸の庶民、平間村のばあさん(名前忘れた)、赤穂藩士などこちらも色々。

大評定で揺れる赤穂藩の場面の

藩士の妻「ご切腹、ご切腹ですって~」

の歌もあり、当時「なんだ、この歌は・・・プッ・・・」と思っていたので、「おお、これをするのか・・・」とニヤニヤしてしまいました。

朱未知留さん 江戸の庶民、遊女、赤穂藩士の妻など 他はやはり歌でご活躍!

初代『エリザベート』皇太后ゾフィー様。

美声は相変わらずですね!

はやせ翔馬さん 小林平八郎、赤穂藩士、江戸の庶民など

正直現役時代はあまり記憶にないのですが(失礼)、小林平八郎、いいじゃないの!

ねとーっとした暗さがにじみ出ていて、いやらしい感じが良かったのかも(?)。

最後「ほれた弱みだ」と言いつつお蘭を斬る。嫌な奴ですね~。

寿つかささん 赤穂藩士、おきくの父親の棟梁、江戸の庶民など

すっしぃもお久しぶりですが、現役時代より、今回の方が声が落ち着いていて聞きやすかった印象。

棟梁がきっぷがよくて江戸っ子だったので、出番もっと多くてもいいよ!

個人的感想と見どころ(全体)

最初から涙で視界がボヤける

この作品を企画した方々、出演者の皆さん、スタッフの皆さん、本当にありがとうございます(深く頭を垂れる)。

観に行こうか悩んでいる方、もう公演は終わってしまいましたが、再演があったら是非観てください!

私はもう最初からずっと涙腺がゆるんでいる状態でした。

やはり三つ子の魂百までというか、一番多感?感受性の豊かな時に見たものは心と脳みそに刻み込まれるものなので、何十年経っても自分の中では色褪せない。

この『忠臣蔵』は赤穂浪士が討ち入るだけの話じゃない。

君主と家臣のお互いに対する思いや、浪人になることの苦悩、忠義と現実のはざまで追いつめられる姿、恋愛模様、政治的思惑・・・などなど色んな要素が盛り込まれている。

改めてこのオリジナルの脚本を書かれた柴田先生は素晴らしい!と思います。

その作品も、あの当時、日本物を多く経験していた雪組だからこそできたのでしょう。

あと「おおお~(涙)」だったのが、フィナーレナンバーとして、当時と同じ大階段のフィナーレを歌い継いでくれたことでございますよ!!

しかもおそらくここで銀橋に出て来て・・・上手のお客様にご挨拶、下手のお客様にご挨拶、目線はここで・・・という宝塚のフィナーレをそのままやってくれたこと!
(銀橋ないけど)

やっぱり宝塚っていいなあ~つらい浮世を忘れます。

感動で気持ちを高ぶらせたまま、家路についたのでした。

明日待たるる・・・その宝船・・・ごめん!(大高源吾 by海峡ひろき)

↑これ、言ってほしかったな・・・。

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